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乗鞍岳をゆく [岐阜のやま]



~前回までのあらすじ


豪族で由緒正しい家柄の
JRO(ジェイ・ロー)は、
幼なじみで帝国の司令官となった、
SUZUッサラとの再会を喜びます。

ですが生まれ育った地に「力」による支配を
推し進める
帝国のやり方を受け入れることが
できないジェイ・ローは
ついにはスズッサラと
仲たがいするのでした。

怒ったスズッサラは彼に濡れ衣を着させて
奴隷の身分に落とし、そのうえ彼の大切な家族を
牢獄に入れてしまうのです。

ジェイ・ローはいつかこの地に戻ること、
そして必ずスズッサラに復讐することを
神に誓うのでした。~




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スズッサラにより罪を着せられたジェイ・ローは、

奴隷となりガレー船の漕ぎ手にさせられます。






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そこでは名古屋を夜の10時に出発して夜中3時前には

「ほうのき平無料駐車場」に着くという、
過酷な労働が待ち受けているのでした。






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しかも「シャトルバス往復2600円」という
アコギな料金体系をのまなければ
その先に行けないというのです。

JAFカードの恩恵もないことに怒った
ジェイ・ローはその時、神への信仰を捨てました。






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バスに揺られて40分ほど、
そこは標高2700メートルの世界です。


あてもなくうろつくジェイ・ローの前に
年老いた登山客があらわれ話かけました。

「アナタは旅の人らしいが

ナザレのお人か?」

ジェイ・ロー
「ナザレ?違います。ナゴヤです。」

「そうか、すまないのう。
もしや【あのお方】かと思うてな。
ワシはな、お会いするために戻ってきたのじゃ。
ちょうどアナタと同じくらいのお年じゃろう。」

「あのお方?・・・誰なんです?」

「お会いすればわかるじゃろう・・・」

「?」



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気がつけば
通りを長い列ができています。






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列のなかにあの年老いた登山客がいました。

「おーっ、先ほどのご仁!

あのお方に会えたのじゃ。
成人しておられた。
間違いなく神の御子だ。
さぁアナタも一緒に来なさい。
奇跡が始まるのじゃ。」

ジェイ・ロー
「オレは神さまなんか信じてないね。

なんのなぐさめにもならないからな。
結局長生きしたいと思ったら
ジョギングするのが
一番なんだよ。」


行列の先は
大黒岳の頂上に続いているようです。

その大黒岳に人だかりが。




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ナザレの人
「ぐぐぐぐ、」






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「あちーっ!ものすごくアツイーっ!!
いいですか?カメラ用意してください!
いきますよ!いきますからね!」




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「せーの、わちゃーっ!」

ポイっ!




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「おおーっ!神よーっ!」
「インスタばえじゃーっ!」






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ジェイ・ローは目もくれず
次のビューポイントを目指します。





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次から次へと到着するバスが観光客をはきだします。
この日も下界は最高気温35度以上と猛暑が続いています。
そのため真夏でも平均気温12度というこの地に
みな避暑を求めてやってくるのです。






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ジェイ・ローは富士見岳を目指します。



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この高地には様々な湖があり、
エメラルドグリーンの色合いが
この山に彩りを添えるのです。




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何か不穏な空気が。
どうやらスズッサラがまたいつもの
ビビりを起こして剣が峰は行かないと
言い出したようです。




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一人駐車場に戻るスズッサラ。
それは彼を剣が峰の頂上から突き落とす
ジェイ・ローの復讐が失敗に終わった事を意味します。






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なんだよあのオッサン
大して歩いてないんだから
もっと楽しめばいいじゃんか~
あーあホントつまんねぇ!

むかし・・・常念岳へ行く途中
渇きでマジに死にかけた時、
水をくれた人がいたんだ。
助けてもらわないほうがよかったわ。
もうオレはなにもかもイヤになった。






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マスターY
「ボクはさ、憎しみがナニを起こすかをたくさん見てきたよ。
ボクの親父も憎しみで燃え尽きたんだ。
でも許しや愛が、憎しみよりも力強く偉大だと
大黒岳で若いラビがハナシているのを聞いていたんだ。
ボクはそれを信じたいな。」

マスターまでなに言いだすの!?
アホらし!





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この先が剣が峰。
50分ほど歩きます。
3026メートルです。







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はぁはぁ
もうちょっと。






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おおーっ!
混みこみだな~






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そこにはセクシーなラウンドガールがいました。




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スズッサラが待ってるから戻るか。
ホントにしょーのないオジサンだぜ。






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てくてく。






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遠くに見えるバスターミナルは
ゴルゴダ平駐車場です。







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なんだ騒がしいな。
えっ?ナザレの人が捕まった?
磔刑(たっけい)の罰が言い渡された?
はりつけの刑だって!?






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う、うわーっ!!

オレはあの人を知ってる!
常念岳でオレに水をくれた人だ!
オレに水と生きる気力をくれた人だ!
この人が一体何をしたというんだ!
どーして死刑にならなければいけないのだ!

あっ!あのヒト!あのじいさん!
ちょっと!
どうしてこんなひどいコトになったんだよ!


年老いた登山客(バルダザール)
「皆の罪を持っていってくださるのじゃ・・・・
【あの方】はそのために生まれたとおっしゃっていた。
そのためにこの世に現れなさったというのじゃ。」

「死ぬためにだって?
死ぬために生まれてきた!?
わかんねー!イミわからん!

それじゃあ何もかもおわりじゃないか!?」

「そうではない・・・
これが始まりじゃ。」





息を引きとられるせつな、
ジェイ・ローには【あのお方】が

「父よ 彼らを許したまえ」と
おっしゃるのが聞こえたのです。

ジェイ・ローは自分のなかの全ての恨みの感情が
消え去っていくのを感じました。

そして目の前には晴れわたる空だけがありました。

どこまでも。



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はれるや~はれるや~はぁれぇるぅやぁ~




        THE END



    A Metro~Goldwyn~Mayer










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