「早春淡墨桜浪漫ウオーク」に行く [ウォーキングっていいな]
「そのまま左にぐーっと倒してみましょー」
「つぎは右でーす」
さかのぼること30分前。
「お願いします!マスターワイです!初心者です!」
「第20回 早春淡墨桜浪漫ウオーク」
愛知県一宮市(真清田神社)から
岐阜県本巣市根尾(淡墨桜)までの60キロコースと、
途中から同コースに合流する38キロ、28キロ、
18キロ、13キロ、5キロの計6コースを設定する。
▢38kmコース 出発地[岐阜県瑞穂市民センター]
08:15 受付開始
08:45 出発式
09:00 出発
18:30 ゴール〆切
※参加費1,500円
「ネタの為だけに60キロを選択するのはやめてくれ」
SUZUさんの猛烈な反対にあってオレたちは
38キロコースにトライすることになった。
もちろんそんな距離も歩いたコトはないけれど
観光しながらのんびりダラダラ歩いてみようと
参加してみたのだ。
パカーン!(号砲)
マスターY
「すごい!SUZUさんがわれ先にとヒトを押しのけてる!
こんな積極的なSUZUさん初めて見るわ!」
SUZUさん
「平地なら大丈夫。いけます。
ワタシがペースを作りますので皆さんは
そのままついてきてください。」
おーっカッコいい!
参加者名簿を見るとさ
全国から愛好者が集まってんだよな。
年配のヒトはモチロン、
若いグループや女性の集団もあってにぎやかだ。
たったったったっ。
背後から軽快な音。
支配階級
【60族(ろくじゅうぞく)】だ。
刺繍入りの特別ゼッケンが作りだす秩序。
プラスチック製のワッペンが雄弁に語りかける。
「キミは?ふーん、【さんじゅーはち】なのか?
そーか、そーか。
わかってるかもしれんがワタシタチはキミたちより
22キロ多く歩いてるからな。」
一宮市を6:30にスタートした【ハガネの軍団】が
オレたちをわんさか抜かしてゆく。
すげー!みんな走ってるじゃん!?
ナニコレ?歩かないの?
標識やヒトを配置してあるから迷うコトなし。
おっ、カッコいいな。
近くに廃線跡とかあってさ
ちょっと寄り道。
農道をゆくかと思ったら普通の公道なんだな。
チェックポイント
「富有柿の里(ふゆうがきのさと)」
無料の給水所あり、干し柿や焼きもちも販売(100円)
マスター
「60キロのヒトたちはすごいですね!
これは普通にマラソン大会じゃないですか?」
確かにまぶしいヒトたちじゃ。
オレたちはのんびりいこーぜ。
「おつかれさまでーす!お茶どーぞ!」
おーっアリガタイ!
沿道の皆さんのご支援あり。
SUZUさん
「ぜぇぜぇ・・・ご、ご飯にしましょう。
ゴ、ゴホゴホ!」
この河原がいいじゃん。
シートを広げて
さぁボイルボイル!お湯わかそーぜ!
「ふぅーっ、はふはふ、はふはふ」
あれ、
ヘルシーなヤツじゃないの?
SUZUさん
「あんなくそマズいのはラーメンじゃないです!
やっぱりコレです。
ラーメンはカロリーがイノチなんです!」
なんじゃそりゃ。
マスター
「こりゃ遠いな~!
まだ半分もきてないですよ。」
何よりみんなメチャマジ歩きじゃない?
想像と違ったよなぁ、途中でどっか寄ったり
ゆるーいカンジじゃないもんな。
「こんなトコでメシをのんびり食べてるのは
オレたちくらいですよ、
もしかしたら急いでいかないと
時間内につかないんじゃないの?」
なんかお湯沸かす為だけに2リットルの水を
背負ってるSUZUさんがアホに見えてきたわ。
SUZUさん
「さ、さぁ、参りましょうかの・・・(ヨロヨロ)」
こりゃもうダメだな。
おっ、
樽見(たるみ)鉄道だ。
SUZUさん
「ぴ、ぴろぽろろーん、」(※意味不明)
ペースが一気に落ちてしまった。
時が止まったようだ。
あれ、携帯に電話だ。
えっ?SUZUさん!?
ナニナニ?あら!いつの間にかあんな遠くに!
SUSUさん
「もしもし、
申し訳ありません。リタイヤです!」
えーっ!?
最初のイキってたヤツは何だったのか・・
巡回車が疲れちゃったヒトを拾って
最寄りの駅まで送ってくれるんだってさ。
こりゃラクチンだよね。
よーし
こっからはオレたちもマジウォークしてみようぜ!
うおーっ!
さんじゅーはち族の逆襲じゃーっ!
ろくじゅー族をじゃんじゃんぬいてやるぜぇー!
ごぼうぬきごぼうぬき。ウケケケケケ!
な、なにーっ!
マスター!オレをぬくぅー!?
ぬぬぬー!
負けん、オレは負けられん!
ブーストオン!加速ごーっ!
ぐうぉー!
オレとマスターの意地とプライドがぶつかり合う!
な、なんかカラダが浮いてきたぞ!
(たたたたたたたっ)
気がつくとオレたち二人はいつの間にか
走っていた。
なんだこれは人類の進化か?
あまりにスピードを上げすぎて
いつの間にか走り出していたのだ。
(あかん、アホみたいに走り出してしまった・・・
ぜえ、ぜえ・・・キツイ!メチャメチャキツイ!)
誰か!止めて!マスターを止めて!
お願い!
なんじゃもんじゃさまぁぁぁ!
ピキーン!
おばちゃん
「はいはい!お疲れさま~!
止まって止まって~!
お茶飲んでいってくださ~い!」
た、たすかった~!
んぐんぐ・・・
こいつはうまいな!
オレはさっきの不思議な出来事をお母さんたちに話した。
「そりゃアンタ、【よーりょく】だよ。(揚力?)
死んだじーさまから聞いたことがある!
ここいらの村あたりで、あまりに速く走ろうと
カラダをこう、前のめりにし続けるとな、
空気の流れか何かで
カラダが浮くんことがあるんじゃ」
「そうそう!あれじゃ、ヨウハチのトコのキスケが
あまりにはよう走りすぎてそのまま
空に飛んでいってもうて帰ってこんゆうハナシじゃったわ」
「そげなことにならんでよかったなぁ」
あはははは!面白いコトいうなぁ!
ねぇ?マスター?
あれ?マスター?どこ!?
マスターぁ!
まさかこれが【よーりょく】?
とんでいってしまったのか・・・
もういい!
あと少しだ!
オレはやる!一人でやりきってやる!
へっ!こんな橋!
どうってことないぜ!
う、うわーっ!
(ジャボーン!)
た、助けてぇ!ブクブクブク・・・・
ずぶ濡れになりブルブル震えるオレの前に
二人の天使が現れた!
「がんばってくださーい!」
「あと少しでーす!ハイターッチ!」
可愛らしい女のコと触れ合って
オレはまた立ち上がる。
17:30
旅の終わり。
「あんた、60じゃないの?
さんぱちはあっちあっち」
がんばってゴールしても
【さんぱち】は【さんぱち】でしかない。
オレは思う・・・
牛丼を食べるのに「大盛」を頼むやつが偉いのか?
「並盛」では食べたことにならないというのか?
牛丼のおいしさになんの違いがあるというのだ。
偉大なる精霊よ、
アンタは立派すぎちゃってさ、
オレなんかには「なんじゃもんじゃの木」の方があってるぜ。
さぁ、帰ろう。
ワイフが家で待っている。
シツレーしまーす。
うっ!
なんだ?この重苦しい空気は。
これは負傷兵輸送列車か?・・・
この前のヒト・・・・
なんかSUZUさんに似てるな・・・
いや!SUZUさん!
SUZUさんじゃねーか!
SUZUさん
「おーっ!会いたかったですよ!」
オレもだよ!SUZUさん!
あのさマスターがさ、よーりょくってやつでさ、
ホントに飛んでったんだよ!
信じられないよ!
それでさ、それでさ
ガタンゴトン!ガタンゴトン!
ガタンゴトン!ガタンゴトン!******
おしまい。
翌朝からオレにおこった「肉体の崩壊」については
恐ろしすぎてここには書けない。