妻籠 馬籠をゆく [岐阜のやま]
巨大な高札がそびえたつ。
この先に様々な困難があるも
決して気軽におカネを使うでないと書いてある・・・
わかっている・・・
わかっているぞ!
ビンボーをこよなく愛するオレは
ムダなカネは一切使わん!
中山道の宿場町、
馬籠(まごめ)から妻籠(つまごめ)へ
紅葉を愛でる気軽な木曽路ハイキング。
だが図らずもオレは
謎の巨大組織に立ち向かうことになったのだ。
中央道中津川ICを下りて馬籠宿へ
そこにはありがたく無料駐車場が点在する。
ここから車を置いて妻籠まで移動。
妻籠宿からバスで馬籠宿に戻るルートをチョイス。
峠越えといってもそれほどの高低差もなく
7km2時間半ほどのひととき。
馬籠宿は身軽な恰好の観光客であふれていた。
そのなかでオレ達といえば、
とくにマスターY・・・
マジ登山の格好!
あーっ恥ずかしい!!
民家を通り過ぎようとしたその時
「ガン!ガタン!」
突然テーブルが置かれ
おばあさんが行く手をさえぎる!
「干し芋はいかがかの~
うらやまで取れたけん
いっちょ買ってけろ~」
都会から派遣された売り子役のおばあちゃん
ワザと着古した着物を着て
現地のヒトに見せかけている。
あんた生まれは東京だろ!(方言メチャクチャだぞ)
セントラルキッチンで調理されたであろう
謎の原料で形どられたイモ風味のジャンクフード
合成ドラッグでも入っているのか
かめばかむほど優しい甘みが口に広がる。
いかん、クセになる味だぜ。
柱の陰で謎の黒服がインカムで誰かと通話している。
声が筒抜けだ。
黒服
「中年のオトコ4人組、ただいまイモを購入して
そちらに向います。 購買力はそれなりにある模様、」
あっという間に
馬籠峠 標高801M
そこにはまさに「峠の茶屋」があった。
SUZUさん
「ここはワタシに花をもたしてください」
「ほら~、おいしそうな笹まんじゅうですよ」
や、やられた!SUZUさんまで!
ドラッグで酩酊状態になったオレは
ナニを食べてもおいしい。
このモチモチの食感と中のアンコが絶妙!
(4個入り500円)
誰もいない道
だが刺すような視線を感じる。
ほどなく歩くとあったのが
妻籠宿「いちこくお休み処」
SUZUさん
「おっ、無料休憩所って書いてありますよ」
そこにいたのは
あからさまに怪しい老人の身なりをした屈強なオトコ
「ようきなさったなぁ~
どうぞこちらへ
いまお茶入れますからな~」
もらってくれといわんばかりに
目の前のお皿に大量のアメが盛られている。
マスターY
「(小声で)ど、どうしますか?もらいますか?」
ダメだ、手を出すな!ワナだぞ!
「はい、お茶どうぞ~」
ズズズ・・・
ぬるくもなく、かといって熱すぎない
真心のこもったお茶だ・・・
ご、ご主人!このお茶代はいかがしましょうか?
「ははは、お代はいりませんよ!」
(といって、じーっとどこか一点を見つめる)
パチパチッ・・・
囲炉裏にも火がついている。
素人はだませるだろうが
あれは最新式のLED照明だな
ご丁寧に人工の煙まで噴出する仕組みのようだ。
こんなに離れていてもあったかい。
木の焼ける独特の匂いまでホンモノそっくりだ。
この壮大な演出品の数々
維持するのに一体いくらかかるのか?
それなのに一切無料とは・・
このビジネスモデル!?どうなってるのだ!
ニセおじいさん
「面白いおひとだね、あなたは
(といって一点を見つめる)」
一瞬、おじいさんの目が光る!
その視線の先が気になる・・・
見ちゃダメだ!ゼッタイ見るな!
で、でも気になる!
チ、チラ、チラリ!
うううう・・・うわーっ!
しまったーっ!見てしまったぁー!
DONATION(寄付・寄進)の意味がわからなくても
その意図するところは明快だ!
もう後には戻れない!
・・・・沈黙が室内を支配する。
おじいさんとオレ達は誰ひとりともピクリと動かない
「・・・・・・・(ゴクリ)」
沈黙を破るSUZUさん
チャリン・・・
(オレ達)
チャリン
チャリン
チャリン
「ひ、ひぃーっ!!」
オレ達は命からがら逃げ出した。
仏像までもメッチャ怒っている。
牛頭観音(ぎゅうとうかんのん)。
由来は現地で確認いただきたい。
冷静さを失ったままのオレ達は
とうとう敵の中枢基地
「妻籠宿メインストリート」へたどり着いた。
そのお店はひときわ異彩を放っていた。
お茶処「おもて」
五平餅
200円
えっ?注文してから焼くので待てと?
中からゴソゴソ音が漏れる
(「ええっと、袋のまま600Wで40秒ね・・・」)
(チーン!)
まさか!そんなコトは!?・・・
「はぁい、おまたせしましたぁ」
パ、パクリ・・・
う、ううう、ウマい!
なんだこの深みのある味噌は!
普段に食べる五平餅とは明らかに違う!
クルミの風味もキク!
米もうまいぞ(うるち米だってさ)
味噌好きのオレにはたまらん!
もっと他の五平餅も食べてみたい!
い、いやいやいや
ダメだダメだ!
もう買わん!
その手には乗らん!
これ以上何も買わんぞ!
そしてクライマックス!
ドドドドドドド!
地響きをたてて
ついに敵の大隊が現れた。
くるなら来い、
道連れにしてやる!
旅行会社のガイドさん
「はい、皆さんコチラですよ~」
「は~い、こちらが【澤田屋】さんになりまぁす~!」
うわぁ!ものすごいおばちゃんの群れ!
【澤田屋】ってナニ?有名なの?
えっ?栗きんとん!?栗きんとんの澤田屋さん?
すぐここから立ち去ろう!
ちょ、ちょっと通してください!
(進行を妨げるおばちゃん軍団)
あらっ!あららーっ!
(押し戻されて澤田屋のレジの前へ)
「ちょうだい!栗きんとんちょうだい!」
「次、アタシ!アタシが買うわ!」
「ちょっとコレ!栗きんとんちょうだい!」
なんだこの熱気は!
何か今買わないと損するようなお祭り状態だ!
「ちょっと、そこのお兄さん!
あんた、ソコに突っ立ってて、
買うの?買わないの?どっちなの!」
は、はいっ!買います! 6個入りをください!!
このときの出来事はもう何があったか記憶もおぼろげだ。
ただ憔悴しきったオレには歩く気力もなかった・・・
ちょうど来たバスにのって馬籠宿に戻った。
満員で座ることは叶わなかった。
料金は片道600円
本数が少ないので事前チェックが必要だ。
オレは無事に家に戻った。
傍らには6個入り1440円の栗きんとん。
あれは本当の出来事だったのか・・・・
妻
「モグモグ・・・ああ、おいしいね!
いいなぁ、アタシもいきたかったな~」
モグモグ、
バカ者!オマエが行けば
もうまるハダカ!身ぐるみはがされるぞ!
(SEE YOU NEXT YEAR)
妻籠観光協会↓
http://tumago.jp/index.html
木曽御菓子司 澤田屋↓
http://www.sawadaya.com/
南木曽バス時刻表↓
http://www.town.nagiso.nagano.jp/kankou/jikokuhyo.html
電話するSUZUさん
「ええ、あの【あおり】は効果的でしたね、
やはり【ツアーガイドアピール作戦】は
一番有効な手立てだと申し上げたでしょう。
ええ、はい、あとはいつもの口座に、頼みますぞ」