私とバイロン(と花子) [フィギュアっていいな]
家族が寝静まった週末の夜
私の秘め事が始まる。
「バイロン 対 ネゴラ 鳥獣戯画対決セット」
もともと今年の1月に秘密裡に販売していたらしいのだが
それを知ったとしても品薄で手に入らなかったであろう。
私はオークションサイトを利用した。
あれほど嫌悪していたネットオークション・・・
青少年の非行の温床、
マフィアの汚れた金の洗浄と
悪名高いブラックマーケットに
この私がまさか「にゅうさつ」してしまうとは・・・
(うぉーっ!あと10分!入るな!誰も来ないでくれぇ!
このままワタシにゆずってくれーっ!
わーっ!誰か入りよったーっ!
いくのか!この上の金額をいくのかーっ!
泣きながらクリックーっ!)
どうしても手に入れたかった私は
日々の慎ましい生活を
帳消しにしてしまうほど
法外な金額を投入してしまった。
「ネゴラ」についてはまた別の機会をいただきたい。
「黄金蛙バイロン」である。
ほのぼのとした可愛さに満ち溢れている。
私はあのムスメを思い出して笑みをこぼす。
5年ほど前になるのか
そこは新大阪駅のホーム、
疲弊していたその頃の私は
ただぼーっと新幹線を待っていた。
気がつけばかたわらに、なんと
芸人の山田花子さんが立っていたのだ。
(おお・・げいのうじんではないか!?
ど、どこを見てるの?ポカーンとしてるね・・・)
そのままいっしょにまったりした
ほんの一瞬のできごと。
大阪での初めての単身生活。
慣れない仕事やちょっとした寂しさも重なって
あの出会いは深く心に刻まれている。
花子・・・・
キミはあの時のハナコなのか
また私に会いに来てくれたのか?
このずんぐりむっくりした体形まで
まるでそっくりではないか!
山椒魚怪獣なのだというバイロン。
白やら黒などが多いのだが
この色あいが気に入ったのだ。
やっぱりキミには黄色が似合う。
そろそろ始めよう
部屋のまわりを見渡し誰もいないことを確認する。
夜中にパソコンで不健全なサイトを
コソコソと見る生活を私は否定する。
人生の黄昏(たそがれ)を知った男の
夜の愉しみはもっと荘厳で創造的であるべきだ。
私は集中する。
上司に媚び、取引先にへつらう日々の私は道化師・・・
やわな仮面を脱ぎ捨てろ!
心の奥底に眠る凶暴なキバよ
今、汝は覚醒の時を迎える!
私はおもむろに親指と人差し指で
バイロンの尻尾をつかんだ!
(せーの)
「おんもであんよ~
テクテクテク~
はぁーい、おじょうずでちゅね~
あんよがじょうずにできましたでしゅよ~
こんどはこっちをあんよしちゃいますからねぇ~!
はぁい!
おんもであんよぉ~!
おんもであんよぉ~!
あんよ~あんよ~!」
ああ
もっとお友達が必要だ。